INTRODUCTION

教室紹介

糖尿病・肥満病態治療学分野の研究目的

日本人糖尿病患者の現状

日本人糖尿病患者数は増加の一途をたどっており、2016年の国民栄養調査ではとうとう1,000万人の大台に乗り、今後も高齢化に伴い更なる増加が予想されている(すでに60歳以上の日本人の3人に1人が糖尿病もしくは糖尿病予備軍)。そして、糖尿病患者は日本人全体平均と比較して10年ほど短命で健康寿命も短く、膨大な合併症治療費による医療費増大は国家的な問題にもなっている。そのような中、14日間連続の24時間血糖モニターの実用化(保険適応)など医療機器の進歩は目覚ましいものがあり、糖尿病治療薬も最近10年ほどの間に開発が進み飛躍的に進歩してきた。おかげで以前と比較し血糖コントロールはしやすくなり、将来の合併症予防や(健康)寿命延長に大きな期待がもてるようになってきた。しかし、非専門医にとっては、その数多くの治療薬、治療法を上手に使いこなすのが、かえって難しくなってきたというのも事実である。

糖尿病治療の実態

高齢者糖尿病患者の増加により、血糖コントロール目標は画一的なものではなくなり、認知機能や身体機能に応じて、患者個々のQOLや治療満足度まで考慮した治療法が実臨床で求められるようになってきた。最近2年ほどの間に、欧米各国で薬物による治療効果や生命予後の違いを示す大規模臨床研究が次々と報告され大きな注目を浴びているが、これらの多くは高齢者を含まない限られた対象に対して、厳格な臨床治験という管理のもと、また非日常的な管理目標値をもって治療されており、日常診療下でも同様の結果が得られるのか、日本人でも同様の結果であるのかは、今後さらに検証が必要なところである。

日本の抱える肥満糖尿病患者

食の欧米化や車社会の発展は、日本でも肥満者を増加させてきた。2007年にはメタボリック症候群という名前が流行語大賞にも選ばれるほど、すでに内臓脂肪型肥満、メタボは身近な問題となっており、高齢者糖尿病と同時に肥満糖尿病の増加も問題になっている。昨年から当院外科Ⅱを中心として科を超えた連携チームで開始した肥満症外科手術(メタボリックサージャリー)も、糖尿病を治癒し生命予後を改善する治療法として期待されている。海外では内科的抗肥満治療と肥満症外科手術を比較した10年以上にわたる臨床研究において、内科的治療と比較して肥満症外科手術は長期的な体重減少、糖尿病など肥満関連疾患の改善・合併症減少、心血管イベントや発がんなどの減少、総死亡減少効果に優れており、その結果として、生涯総医療費の減少(術後5年で同じになる)、食費・被服費減少による経済的負担軽減、就業可能になり生活保護脱却・労働人口増加といった社会的利点も多くなることが示されている。アメリカ糖尿病学会ではBMI27.5kg/m2以上の血糖管理不良の糖尿病患者に対しては、この肥満症外科手術を考慮すべきであるとガイドラインで示すようになり、本邦でも肥満症(糖尿病、脂質異常症、高血圧、睡眠時無呼吸症候群のいずれか)を合併したBMI35kg/m2以上の高度肥満患者に対しては、施設は限定されるが内視鏡的医スリーブ術が保険適応になった。食事制御が効かず、いかなる内科的治療も無効であった、道内の肥満糖尿病患者にとって福音となっている。

有益な治療法の開発を目的に、本寄付講座を新設

日本人糖尿病患者において、高齢者を含めた実臨床で役立つための治療法開発、患者QOLや治療満足度にフォーカスした治療法開発、肥満糖尿病患者に対して血糖管理だけではなく、内臓脂肪減少やメタボ関連疾患の集約的改善を目指した治療開発、患者血糖管理の効率をより上げるための糖尿病検査機器有効利用方法の開発、などのさらなる進歩・研究のニーズが高まってきている。様々なタイプの糖尿病およびメタボリック症候群の領域における、患者QOLを含めたより有益な治療法の開発を目的に、2018年2月1日、本寄付講座が北海道大学大学院医学研究院に新設された。